野ブタ。をプロデュース 第8話

※2005年に別のブログで書いたものを再掲しています。

前回の7話が「最も切ない話」だとすれば、今回は「最も心が震えた話」とでもいおうか。くす玉が転げ落ちるシーン(つまり、かなり最初のほう)からずっと動悸がしてて、震えが止まらないような感覚で見ていた。

あのくす玉に象徴されたように修二が転落していくさまは、予想はしていたけどやはり衝撃的だった。しかも転落のきっかけが、友達を裏切ったわけじゃなくて本当に誤解だったのだから辛い。でもその前に、まり子の弁当を食べたと嘘をついたとき、すでに誤解を鵜呑みにされてしまう下地を修二自身が作っていたのだけど。その結果、もはや何を言っても信じてもらえない怖さから、誤解をとくための努力もできなくなって心を閉じてしまう、という流れがとても見事だった。

人気者から一転、シカトされ孤独に過ごす修二の姿は切なかったなあ(修二の背後にそっと弁当を置いていくまり子はもっと切なかったけど)。本当に、学校という狭い世界で無視されて過ごす辛さって並大抵ではないと思う。笑わなくなった修二の表情から、そういう身の置き場のない感じがよく伝わってきた。亀梨なかなか上手いじゃんか。

でもこの孤立って、よく考えたら、「本当のことを言っても信じてもらえない」と思い込んでしまった修二自ら招いた状況なんだよね。吉田くん(石井智也)が真相を問いただそうとしてくれたのに弁解することを拒否したり、彰や信子が巻き込まれることを心配して「俺に話しかけるんじゃないぞ」と先手を打とうとしたり。「もう言葉が通じねえんだよ。俺の言葉は、もう誰にも届かない。信じてもらえないってさ、こういうことだったんだな」と言うけど、周りの言葉が届いていないのはむしろ修二のほうだという風にも見えた。

で、そんな修二の心を開かせたのはやっぱり信子と彰だったんだけど、2人ともそこへたどり着くまでにはちょっとした葛藤があった。

カスミの言動から一瞬修二を疑ったものの、「本当のことなんて誰も分からないの。だったら信じたいほうを選ぶしかないでしょ」という教頭の言葉を受けて修二を信じることにした信子。

カスミが置いていった修二と信子の写真を見てショックを受けたものの、「見なかったこと」にして修二との友情を守った彰。

カスミの暗躍で、彰や信子まで修二から離れていったら救いがないなぁと気をもんだけど、結局それに惑わされず2人とも修二を選んでくれてホッとした。「人に信じてもらえない怖さ」を知って心を閉じた修二は、きっと「信じてくれる人がいる喜び」を知って笑いを取り戻したんだろうな。ラストの、はにかんだような修二の笑顔がすごく良かった。

というわけで、今回のテーマは「信じること」だったのかな。なおかつ、これまでに提示されてきたキーワードがギュッと詰まっていたように思えた。例えば、「噂を恐れるな」とか「本当のことは誰か1人でも知っていてくれれば十分」とか「友情」とか。

それから、嫌がらせの犯人はやっぱり蒼井カスミだったことがはっきりしたけど、その理由が今ひとつ分からなかった。ただ、ネットの感想で予想されてきた「嫉妬」なんてレベルを超えた、「悪意」としか言いようのない理解しがたいものという印象を受けた。そういえば、第1話のラストに「途方もなく暗くて深い、人の悪意というものと戦わなければならない」という修二のモノローグがあったのだ。あれはこういうことだったのかと、ものすごく腑に落ちた。

だとすれば、残り2話はカスミの悪意との戦いが焦点になっていくのかな。もはや3人の信頼関係が崩れることはないと思うけど、どういうオチをつけるのかさっぱり読めない。

さて、以下はいつものように箇条書きですが、今回はテーマ別に分けてみます。

【小ネタ】

  • 修二の弟も髪の毛ゴム止めしてる!
  • 女性に絡んでたオジサン、「電車男」の牛島さんだよ!顔よく見えなかったけど、たぶんそうだよ!
  • 「Are You Happy?」
  • 墨高のヨネスケになった信子。無表情キャラにあの巨大しゃもじは、普通におもしろいって。
  • 横山先生の弁当!誰が作ったのー??
  • 決め台詞の練習をするとき、信子の肩に手を置いてる修二をさりげなく「触るな」と追い払う彰。まだ諦めきれたわけじゃないらしいところが垣間見えてツボでした。
  • まり子の弁当を彰が食べる展開には超ビックリした。まさかこの2人がくっつくなんてことはないよね~?まあ、なさそうだけど。
  • 修二のお母さんが送ってきた幸運のブタ人形。だから友達何人?って聞かれたのか。
  • 信子の「コン」が低くて笑った。

【印象に残った場面・台詞】

  • くす玉の飛び跳ねっぷりが凄くて、映像的には笑っちゃうんだけど、修二のモノローグがとても不吉だった。
  • なぜか交番に居合わせた町内会長がいいこと言うんだ。 「世の中っちゅうもんはな、ほんまかどうかなんてどうでもええんや。信じてもらえる男か、信じてもらえへん男か、そのどっちかや。それにな、兄ちゃん、どん底に落ちても人生終わりとちゃうぞ。落ちても人生続くぞー。人生はなかなか終わってくれんぞー」
  • デルフィーユもなかなかいいことを言う。「生きていれば、最悪の日もある。されど、最高の日もある。それが人生」
  • 決め台詞の練習をするとき、信子がまったく普通に笑うようになっていて、ちょっと感動した。
  • カスミと修二の対決(?)シーンは見ものだった。特に柊留美の演技。もの凄く悪どいことを笑いながらさらりと言ってのけるカスミは不気味で怖かった。その悪意を目の当たりにした修二の戸惑いっぷりも、なかなかみせてくれるじゃないの。
  • カスミの狙いはどちらかといえば修二のような気がした。悪意のプロデュースゲームの対象は最初から修二で、たまたま修二の弱点である信子を狙っただけというか。
  • それにしても「自殺したくなるくらい絶望してもらうつもり」と言うその悪意は一体なんなのか。
  • 教頭の言葉を聞きながら、修二とカスミの姿を思い浮かべる信子。画面中央に信子がいて両脇に修二とカスミ、という構図はどちらかを選ぶことを暗示していて、上手い演出だなあと思った。
  • 「うちじゃ代々この糠みその中に、見たくなかったものを入れて封印しちゃうの。で、見なかったことにしちゃうの。お前にも糠みそ分けてやっから、この中になんでも入れちまいな。まあ、何十年かして掘り出したら、そのときは必ず笑って見れるからよ」豆腐屋のおじさんの案で、彰が見たくないもの(修二と信子の写真)を糠みそに封印する儀式がとってもステキだと思った。しかも、彰用の糠みそを入れる小壺まで用意されるところがナイスだ。
  • 「信じれば、どんなことも解決できる。一緒に信じてください」紐を使ったマジックに例え、修二の心を開かせた信子。これって野ブタマジック?まさか校長と教頭のマジックネタがここで回収されるとは思わなかったー!

【修二のモノローグ集】

  • どん底に落ちても、人生は終わらない。言われたとおり、人生はなかなか終わりそうもない。それでも俺は、生きていかなきゃなんないんだ」
  • 「ゴーヨク堂いわく、生きていれば最悪の日もある。されど、最高の日もある。今の俺に、本当に、最高の日なんてくるんだろうか」
  • 「誰にも信じてもらえなくていい。ただ、こいつらにだけは信じてもらいたい。今も、この先も、ずっと」