Q10 #9(最終回)

見終わってじーんとした、そんな最終回だった。

Q10が平太のところに届いたことを、管理人である偽月子たちは「手違い」だと思っていたけど、決して偶然ではなかったんだ!偽月子が言うように、これから平太はQ10のことを忘れてしまうのだけど、実はぼんやりとした形で記憶の片隅には残っていて、平太の代わりに(?)Q10の存在を信じ続けた奥さんの願いを叶えるために作られたQ10を見た時、自分の想像の産物だと思っていたQ10が型番までそっくり同じで目の前に現れたことに驚き、平太自身が忘れていた青春の真ん中にQ10が存在していたことを確信した…という展開、さらに、88歳の平太が書いた手紙によって18歳の平太がその話を知る、という展開になんだか感動してしまった。現在と未来、そして未来から見た過去(って現在なんだけど!)はちゃんとつながっていた!ちゃんとSFになっていた!

Q10の記憶が消えていないうちに未来の奥さんと出会うのは矛盾しているとか、物足りなかったとか、周りの人たちのエピソードが描ききれていないとかっていう感想も見たけど、少なくとも平太とQ10の話がきちんと描かれていたから、私はもうこれでいいじゃないかと思った。どのタイミングで出会っても、結局記憶が消えてしまうのであれば自然と未来の奥さんに気持ちが向くだろうし…。それに久保くんは死ななくて、ちゃんと未来を感じさせる描き方だったし、前回の感想で「どうでもいいよ」と書いてしまった小川先生と柳教授、河合と影山もいい感じにまとまって嬉しかったし、最終回で変な時間拡大もせず、9話ですっぱり終わって良かった。

あと、細田よしひこの怪演ぶりが楽しめた中尾くんは、きっとQ10型のロボットを開発してるんだろうなー。そこらへんはっきり描かれてはいなかったけど、視聴者にそう思わせる余韻みたいなものを感じられて、良かった。藤丘が道を踏み外さなかったことも嬉しかったな。校長先生との会話がすごく良かった。この校長も素敵な大人だったな。

そういえば、「富士野月子」というのは、平太の奥さんになるあの女の子の名前なんじゃないかと前回思ったけど、やっぱり違う気がしてきた。第2話で、偽月子が「富士野月子」の部屋でQ10そっくりな女の子の写真を見ていたからそう思い込んでしまったけど、あれって単にQ10のデータになった写真を眺めていただけだったのかもしれない。でなければ、いくら引きこもりといっても、あの熱心な校長先生が生徒の顔も知らないってことはなさそうだから、不登校の生徒とそっくりなロボットが現れたらおかしいと思うんじゃないかな〜。もしかすると、「富士野月子」は偽月子たちが設定した架空の人物なのかも。「時をかける少女」の深町くんみたいに(彼は幼い頃亡くなった子供の家と名前を借りたんだっけ?)。

冒頭、Q10を失った平太の「自分は人間でまだ生きているけど、Q10はいない。Q10に会いたい」云々のモノローグに、「それは家族や大切な人を失って、残された人間の気持ちと同じだよなあ」としんみりさせられていたら、一転、実は柳教授の機転でQ10のリセットボタンはまだ押されていなかった!という展開がきて、やられた!と思った。

そしてそれは、Q10を返さないためではなく、平太がきちんと納得して自分でリセットボタンを押すための時間を与えるのが目的だということがわかって、うわ、なるほどなーと思った。確かに、結果は同じことでも、考える暇もなく慌てて出した答えより、自分で考えて納得して出した答えのほうが後悔することはないものね。

SF的な要素を借りつつも、やはり木皿さんらしいメッセージが散りばめられていたドラマだったな。最初、佐藤健前田敦子もあまり興味がなかったし、実はセクロボがそれほど好きじゃなかったこともあって、野ブタ。以上の名作にはならないだろう、と、大して期待せずに見始めたんだけど、これは野ブタ。を超えたかもしれないと思う。主役2人がとてもハマり役で良かった。木皿さんと河野Pにはこれからもこういうドラマを作り続けてほしいな。