それでも、生きてゆく

テーマが重いので最初はあまり気乗りがせず、初回からしばらく積録していた。でもTwitterから見えてくる感想が絶賛ばかりで気になり、5話から見始めたら見事にハマりました(笑)。間違いなく今期No.1のドラマだった!これほど毎週続きが気になって、子供と寝落ちせずになるべくリアルタイムで見たドラマは「SPEC」以来かな。まだ見てない第1話から見直したい。

脚本も無駄がない構成でよくできていたし、音楽などの演出も良かった。なにより役者陣の演技が素晴らしくて、大竹しのぶはもちろん、彼女と対決して一歩も引けを取らない風間くんも存在感あったし、主演の瑛太満島ひかりのぎこちないやり取りや絶妙な距離感、表現力の巧さは見ればみるほど感心した。あまりに引き込まれすぎて息するのを忘れるくらい見入ってしまい、CMになると「ぷはー」と息継ぎする感じだった。「息するの忘れる」とか「息が詰まる」とかいう感想をTwitterでよく見かけたので、これは私だけではなかったはず。

加害者の少年Aこと文哉が第2の罪を犯すあたりから、妹・双葉が兄を追って(洋貴の代わりに兄を殺すつもりで)産みの母の故郷へ行くくだりにかけての盛り上がりっぷりは半端なかった。これはもう文哉自身にとっても家族にとっても文哉が自死することでしか救われないんじゃないか、と思わせておいて結局そうはならず、じゃあ文哉が改心するのかといえば、洋貴がどれだけ心を尽くして語りかけても文哉には伝わらないという絶望的な展開になって、一体どうまとめるつもりなんだろう…と思っていたら、これまた予想しなかった「そうきたか!」としかいえない結末だった。

お互いひかれ合いながらも、「加害者の妹だから」「真面目に生きてゆく」ために、第2の被害者の娘・ゆりちゃんを育てる母親役として果樹園に住み込むことを選ぶ双葉と、何度も引き止めながらも双葉を大切に思うがゆえに見送るしかない洋貴。・・・美しいけど、美しいけど、なんで2人ともそんなに真面目なんだ〜!不器用すぎるよ!「じゃあ果樹園に会いに行きます」くらい洋貴も言えばいいのに!おみくじのエピソードに絡めた、2人の決して届くことのない「文通」がとっても切なかった。ってか最初「おお、手紙交換してるのね〜」と思ったのに、おみくじ的なものだと気づいた瞬間ものすごく切なくなった!でもまた次の瞬間に「それ誰かに読まれちゃうんじゃないの?」とツッコミたくなったら涙も引っ込んだが…。

文哉は更生しないまま終わったけど、彼が壊れる要因となった実の母親の顔を見ることができたのは、今後の希望につながる一歩かもしれないと思いたい。一生このままじゃお父さんも救われなさすぎる。たとえ自分(の家族との向き合い方)に責任の一端があるにせよ、これ以上ないくらい悔いてたし。息子の再犯を知った後の、時任父さんの憔悴っぷりや嘆き悲しみ方は思わず泣けるほどの名演技で、いまだ目に焼き付いている。

あと親視点としては、どうして文哉がこういう罪を犯すに至ったかが気になって、それを知りたくて見ていた部分もある。5歳だった文哉の記憶によれば、実の母親が「あんたたちを産まなければ何度もハワイに行けたのに。産まなければ良かった」と言っていたそうで、母親が育児ノイローゼの果てに自分たちを残して死んでしまったことがトラウマ(と言っていいのかわからないけど)だったことが伺えたんだけど、やっぱりどんなに疲れていても、子供の前で「産まなきゃ良かった」という否定的なことを言ってはイカンよなとあらためて思った。それでも、生きてさえいれば、その後の子供との関わりの中でいくらでも立て直せるのだろうけど…死んでしまったら、残された子供は自分を責めるようになってしまうかもなあ。さらに、父親は当時忙しくて家庭を顧みなかったようだし、前妻が亡くなってわりとすぐ再婚してるので、彼にとっての不幸がいくつか重なった結果が文哉だったのかな。

文哉を演じた風間くん。金八先生第5シリーズの時も上手い子だなと思ったけど、いい役者になったな〜。目付きとか仕草とか、本気でヤバイ人にしか見えなかったもの!

いやしかし、こうして書いていてもまとまらないし、まだ書きたいことは尽きないのだけど、ひとまずこのくらいで。